白水の津

灘校の内部情報とか、雑記とか

再公開:予算配分についての考え方

 この記事は灘校生向けであり、専門用語や内部自称に関する知識を前提としたものになっています。あらかじめご了承ください。

 

こんにちは、softeroguraaisuです。今回は、私が予算配分についてどのような考え方を持っているのかを、簡単に説明したいと思います。

「公平な配分」

 「公平性のある予算配分」というスローガンを、私の知りうる限り過去の会計担当副会長の立候補者ほぼ全員が掲げていました。それも当然の話で、予算というのは定量的に価値を配分するわけですから、そこに恣意的な要素があっては困るという感情は自然なものです。

 そして、会計委員会は予算折衝の基準を策定し、それに従って各生徒会組織やクラブに限られた予算の中から配分を行います。しかし、これによって作成された予算案には毎年のように不安が噴出します。そして、そのほとんどは、「特定のクラブの予算が大きすぎる」といった類のものです。生徒会員がより納得する予算配分とは、どのようなものなのでしょうか。

 

生徒会予算とクラブ予算の異なる性格

 私は、生徒会予算とクラブ予算は異なる性格を有しており、それゆえ予算折衝のプロセスも違ってきてしかるべきであると考えています。生徒会予算には政策的側面があるのに対し、クラブ予算にはその側面が極めて薄いからです。

 まず、前者について。生徒会は(親睦としての側面が近年強くなっていますし、私もそれでいいと思っているのですが)あくまで生徒全体の福祉として還元するという役割があります。そのうえで、会誌の発行にはどれくらいのお金をかけるべきなのか、デジタル技術に灘校はどれくらいコストを割くべきなのか、そういった分配は生徒会長率いる中央委員が主導して決定していくのが自然であると考えています。しかし、もちろん細かい部分まで中央委員が把握することは困難ですから、大枠を定めたうえで各委員会と予算折衝を行っていくという形になります。

 しかし、後者に関しては形相が変わってきます。クラブ活動全体に、生徒への福祉だとか教育的意義だとかは存在しまして、それがクラブへの予算配分を正当化する理由になっています。そして、各クラブ自体がすべての生徒会員に広範に利益を還元するのではありません。あくまで各クラブを構成している生徒に利益を還元します。

 つまり、特定のクラブに予算が入ることによるメリットは、基本的には当該クラブに所属する生徒にしかないということです。もちろん、レゴの文化祭展示は灘校生の一定割合が楽しみにしているだとか、例外的な事項はあり、そういったことは予算配分でも考慮されるでしょう。ですが、一般論としては「とあるクラブが得をすれば、そのクラブに入っていない人が損をする」構造になっています。極端な話、会誌委員会に1000万円の予算が配分されたとして、一応生徒会員全員がその利益を享受することができますが、それこそESSに1000万円の予算が配分されてしまうと、ESSに入っていない99%の生徒会員は純粋に損をするのです。そのような、いわば価値のゼロサムともいえるクラブ予算は、どのように配分されてこそ正義であると言えるのでしょうか。

 

結局、自由競争

 公平な予算配分を実施するためにはどのような方針が採られるべきなのか。私は、可能な限り恣意的要素を排除したうえで、各クラブがより多くの予算獲得を目的として自由競争を行うことによってそれが可能であると考えています。

 先月の記事ー生徒投票について論じたものですーでも述べたように、すべての価値観や考慮されるべき要素を考慮した価値基準など、どこにも存在しません。私たちは、考慮すべき要素のうちわずかしか知らないのです。それにもかかわらず、えてして私たちは自らの持っている価値観に基づいた判断基準こそが適切であり、それによって物事が執り行われるべきだと錯覚してしまう傾向にあります。それゆえ、会計担当副会長が「A部はxxx円、B部はyyy円」といった形で予算を配分していくことは、適切であるとは言えません。会計担当副会長も、「私たち」の1人であり、例外ではないからです。不公平な予算配分、と称すると誤解を招くかもしれませんが、少なくとも一定数の人が納得できない予算配分となることは避けられないでしょう。

 それを踏まえて。私は、このような形での自由競争が望ましいと考えています。なお、これは会計規則改正により、今年度の予算配分で実現されます。規則改正に携わら  れた先輩方に感謝の意を表します。ありがとうございました。

・各部がより多くの予算を獲得しようとし、会計委員を説得したりだとか、交渉術を用いる。

・それに対し、会計委員会は折衝のために準備した、統一された予算配分基準を基に、予算支出の可否を判断する。

・利害関係のある人が予算配分を担当することを防ぐ。

・予算折衝、及び予算案作成のプロセスを可能な限り透明化する。

・これらは性善説ではなく、仕組みによって成り立たせる。

 これによって、あらゆる価値基準を包括し、もっとも公平性が担保された予算配分が行えるのではないでしょうか。強弁だとか、揚げ足取りだとかを見抜くだけの弁論能力を会計委員会の幹部が持っていなければ一定の問題点が発生するかもしれませんが、予算折衝や予算案作成のプロセスが透明化されているため、十分にその点を是正することが可能でしょう。私たちは、「特定のクラブにはこの程度の予算が配分されるべきだ」などといった、まるで価値基準を自分自身が包括しているかのような傲慢さを捨てるべきであると考えています。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(2023年12月31日:記事を再公開しました)